診療連携の重要性
口腔カンジダ症の主な原因であるCandida albicansは、病原性が乏しい口腔内常在菌であるため、健常人に発症することはきわめてまれです。日和見感染として発症し、免疫力低下・唾液分泌量低下・義歯装着といった宿主側の因子が非常に大きいです。
通常、口腔カンジダ症のリスクが高い患者さんに接する機会が多いのは病院に所属している専門医よりもむしろ、市中で活躍されている歯科診療所や介護の現場にいる方々です。
そのため、より身近にいる方々(歯科GPの先生方や介護職の皆さん)が口腔カンジダ症についての正しい理解をもち、患者さんの様子に注意を払い、訴えに耳を傾け、専門医による適切な診断・治療へとつなげる診療連携が、今後いっそう重要になってくると考えています。また同時に、病院においても歯科がない場合は、積極的に口腔ケアを熟知した歯科診療所と連携することが大切です。
歯科診療所から病院へ:困難症例は専門家へ
口腔カンジダ症は、病型による自他覚的症状を総合的に勘案して診断します。
患者さんの訴える症状および他覚的所見が口腔カンジダ症を示せば、臨床診断として抗菌薬を処方し治療を行っても構いません。
しかし、どうしても他の疾患との鑑別診断が困難な症例、抗真菌薬の効果が得られない症例等に関しては、専門医療機関へ紹介し、確定診断および適切な治療方法を相談されればよいと思われます。
ここで重要な役割を担うのが地域の中核を担う病院歯科です。
ご開業されている場合は、このような中核の病院歯科と積極的な病診連携を図りつつ、適切な治療、リスクの低減を進めることで、患者さんのQOLは著しく向上することでしょう。
病院から歯科診療所へ:口腔ケアでQOLを向上
病気の診断・治療は医科だけでもできますが、周術期における口腔機能管理はもとより、口腔カンジダ症などの治療は歯科診療所が行い、専門的口腔ケアをしっかり行うことが大切です。
歯科のない病院、歯科はあっても口腔ケアまで手が回らない病院は口腔ケアに力を入れている歯科診療所と連携し対応してください。病診連携を適切に行い、口腔疾患の治療と口腔ケアに努めることで、患者さんのQOLは格段に向上するでしょう。