がん治療と口腔カンジダ症の関係は?
がん治療中に、口腔内に種々の問題が発生することはよく知られている事実(治療による全身抵抗性の減弱と粘膜組織の不安定化により)ですが、ここでは、「がん治療を完遂するために口腔カンジダ症の予防が大切である」という切り口でお話を進めていきます。言い換えれば、「口腔カンジダ症を管理できないとがん治療完遂に何らかの支障をきたす可能性がある」とも捉えることができると思います。
実際、平成24年4月の診療報酬改定にも含まれた周術期における患者さんの口腔ケアについて、歯科診療所においても、抗がん剤治療中の患者さんや放射線治療を受けている患者さんに対して口腔ケアを行うことを評価しています。すでに国立がんセンターおよび日本歯科医師会の連携事業としてスタートしていますが、今後、全国の都道府県でも具体的に始まります。
まずは、がん治療による口腔合併症を知りましょう。
がん治療による口腔合併症
周術期において、特にがん治療時の化学療法や放射線療法により、様々な口腔合併症が現れます。
がん治療による口腔粘膜炎・咽頭炎
60代男性の上顎洞がん患者さんに化学放射線療法を行ったところ、口腔粘膜炎・咽頭炎が現れます。
口腔粘膜炎は口内炎とは分けて定義され、がん治療時の化学療法や放射線治療に伴って発症する炎症のことをいいます。
口腔咽頭カンジダ症を伴う口腔ヘルペス感染症
易感染性(免疫低下)の状態では、単純ヘルペスによる単純疱疹性歯肉口内炎が発症しやすくなり、初感染で一般的にみられるアフタ様のものとは違い、歯肉や口蓋などにも病変が広がります。
口腔カンジダ症へ対応した1症例
口角炎と舌痛のため摂食障害がある症例で、治療開始後2カ月で食事が思うように摂取できなくなってしまいました。そこで、口腔カンジダ症と診断し、フロリードゲル経口用2%10g分2~4回(朝晩ないし朝昼晩就寝前)の塗布・服用を指示しました。このケースは主治医と対診のうえ、速やかな抗真菌薬の投与にて2週間で回復に向かいました。
がん治療を完遂するために
がん治療は、ターゲットとなるがんに対して行うものですが、その副作用により様々な障害が発生します。口腔合併症の重症化・遷延化を予防することは栄養状態やQOLの維持に貢献するだけでなく、カンジダなどの真菌やヘルペスなどのウイルスの二次感染を予防することで、それに続いて起きる敗血症や誤嚥性肺炎などの全身的な感染症リスクを少しでも低下させることができます。
そのためには、医師によるがん治療、歯科医師による口腔管理を行う医科歯科連携の実現が必要となるのです。