知らないと診断できない
慢性萎縮性(紅斑性)口腔カンジダ症は、口腔カンジダ症として頻度が高い病型で、臨床所見からの診断が可能ですが、知らないと対応できません。
この口腔カンジダ症は、カンジダが粘膜下に増殖した病型で、義歯床下粘膜に発症することが多く、舌背や頬粘膜、あるいは口蓋、特に舌の中央部に舌背と相対するような口蓋の正中部に赤い症状がみられ、かつヒリヒリという灼熱感や痛みを訴える患者さんもいます。
口腔内の赤み、舌乳頭の萎縮(平滑舌)、疼痛・灼熱感の訴えがあり、ほかに疑うことがない粘膜の炎症がなければ、口腔カンジダ症と診断できます。
義歯装着と大いに関係
義歯の不具合を訴える患者さんの中で、義歯を外して口腔内を観察すると、義歯装着部と一致して粘膜が赤くなっていることがありますが、これも慢性萎縮性(紅斑性)口腔カンジダ症の可能性があります。これは義歯調整では解決できません。
上記症例は、義歯の粘膜面に一致して赤く紅斑ができてきます。その義歯を細かく切片にすると、カンジダが義歯の内部に入り込んでいるのが分かります。このような患者さんは共通して、義歯洗浄剤を使っていないことが多いため、介護保険施設や在宅などで診療する場合は、義歯洗浄剤の使用の有無は1 つのキーワードになります。
リベース材と口腔カンジダ症
要介護高齢者の義歯にソフトリベースを使用すると、気泡部分(目視できないレベルのものでも)に汚れが溜まりカンジダ菌が繁殖しやすい状態になります。十分な介護がなされていない状況で、このようなものを安易に使ってしまうと、逆に我々が医原性の疾病を作ってしまうことになりますので注意が必要です。
ステロイド剤の投与が口腔カンジダ症を増悪させる
義歯の床下粘膜が赤い場合、義歯性口内炎と診断されますが、これはカンジダが原因であるケース(前述の慢性萎縮性(紅斑性)口腔カンジダ症)が多いです。治療としては、ミコナゾールゲル(フロリードゲル経口用2%)10g 分2回(朝晩食後)を義歯内面に塗布する方法で2週間投与します。
誤ってステロイド軟膏を処方すると、カンジダ菌に栄養与える状態となり、増悪してしまいます。すべてを口内炎と診断するのではなく、義歯の使用や口腔の乾燥などが認められれば、「カンジダ症」であるということも念頭に置きましょう。
舌で発症した慢性萎縮性(紅斑性)口腔カンジダ症
「赤いカンジダ症」とも呼ばれ、舌乳頭の萎縮や粘膜の紅斑が特徴です。このような舌乳頭の萎縮がみられた場合、口角炎になりやすくなります。もしこのような舌の方が口角炎を患っている場合は、カンジダ性口角炎の可能性を十分に考える必要があります。そしてその方が義歯使用者であった場合は、適切な義歯ケアが成されているか十分にチェックする必要があります。