第1選択薬:フロリードゲル経口用2%
【2種類のチューブ】
フロリードゲル経口用2 %には5 gチューブと20gチューブがあります。
5 gは主に医科、20gは主に歯科で使われるので、病院から歯科診療所に患者さんをお戻しするときに、5 gチューブの処方本数を20gチューブに換算して使用量を伝える必要があります。
5 gチューブでは、1日最低処方量の10g でも2本、1週間の処方で14本もの処方本数となるので、患者さんにとって大きな抵抗感があるようです。20g 包装であれば、処方本数は4分の1以下の本数となり、患者さんの心理的負担はかなり減るようです。
【フロリードゲルの特徴】
ゲル状のため、うがいができなかったり、誤嚥の心配がある場合でも処方できるという大きな利点があります。
【お勧めの処方】
おススメの処方の仕方は、1 日5 gを1 日3 回に分け、毎食後口腔内に塗布(添付文書通りの用法・用量は1 日10~20 gを1 日4 回に分けて使用) して、7 ~14日は使うというものです。
3 ~ 4 日で見た目上よくなりますが、ここで治療をやめるとカンジダ菌が残ってしまい再発することが多いです。再発を繰り返すのは使用量が少ないためであるので、7 ~14日は十分な量を使ってください。
口角炎にも有効ですが、口腔内のカンジダ菌が口角部に集合して口角炎を発症させているため、口角部だけではなく、口腔内全体にも塗るようにしてください。
【20gチューブの場合】
20gチューブの場合、1 日5 g使うとすると4 日分です。20gチューブを2 本処方すると8 日分あるので、だいたい1 人の患者さんの治療にちょうどよい量です。もちろん3 本、12日分処方していただいても結構です。
(添付文書通りの用法・用量は1 日10~20 gを1日4回に分けて使用)
【症状と処方量】
軽~中症の方には20gチューブ2 本、重症の方には20gチューブ3 本ぐらい処方しないと効果がありません。塗布された薬剤が唾液に希釈されてしまうため、十分な量を使わないとうまく効果が現れません。
【義歯基底面少量塗布療法】
大型の有床義歯を装着している方の場合、フロリードゲル経口用2 %の義歯基底面少量塗布療法をお勧めしています。義歯の基底面(粘膜面)に1 日わずか1 g、2 週間塗ります。その臨床的効果・真菌学的効果はデータにもはっきり現れています。
義歯の基底面(粘膜面)に塗ってそのまま装着させるため密閉療法となり、塗布部にフロリードゲル経口用2 % が長時間停滞します。
この使い方は添付文書にも書かれていますので、診療報酬請求上でも問題となる使用方法ではありません。
ただし、義歯に定着したカンジダ菌は非常に強固でなかなか除去できないため、義歯装着者で口腔カンジダ症を繰り返す患者さんは、義歯を作り直すことも必要かもしれません。その場合、レジン床よりも金属床のほうがカンジダ菌の付着を抑えることができます。また、抗真菌作用のある成分が配合されている義歯洗浄剤が発売されていますので、これによるメンテナンスにより、口腔カンジダ症発症のリスクを軽減できます。
【禁忌】
フロリードゲル(ミコナゾール)は、肝代謝酵素CYP3A・CYP2C9の強力な阻害剤として知られ、これらの酵素で代謝される併用薬物の血中濃度を上昇させることが報告されています。 メーカー情報によるとフロリードゲル5g/回では、血中濃度は定量限界未満です。しかし10g/回では血中に検出され、仮に少量でも相互作用が生じることが示唆されています。
高齢者において、頑固な紅斑性や肥厚性口腔カンジダ症が認められるものの、ワルファリン服用されている方も多数おられ、この場合は併用薬との相互作用が少ないファンギゾンシロップの処方が安心できます。
ただし、ワルファリンは服用されていても入れ歯を使用されている場合は、入れ歯の内面にフロリードゲルを少量塗布することで対応が可能(先に示した義歯基底面少量塗布療法)です。
というのも、この場合はフロリードゲルの使用量は1日約1~2グラム程度だからです。