カンジダ菌は旅をしながら強固にへばり付く
カンジダは酵母型や仮性菌糸、あるいは菌糸を伸ばした状態で存在します。酵母型の大きさは血小板と同じくらいの3μm程度であるため、血管内に侵入すると全身的に広がり、さらにその先で増殖しやすいという特徴があります。
また、定着した場所で菌糸を伸ばし、より強固に定着(粘着性のバイオフィルムを形成)して増殖を続けます。それが口腔内の場合であれば、増殖したところに他の微生物が付着してさらにバイオフィルムは成熟し、口腔内環境を悪化させていきます。
特に血清成分が存在する場所ではカンジダは、強固なバイオフィルムをより一層成熟させ、炎症を増悪させます(残根周囲など)。
また、
表在性真菌症と深在性真菌症との関連性は明確ではありませんが、酵母型のカンジダは球形で非常に小さいので、血流に容易に入り、各臓器へ到達しやすいと言われています。そのため、真菌性肺炎等の原因は口腔カンジダ症からの移行という説もありますので、口腔カンジダ症を管理することは重要な砦を守ることともいえるのです。
口腔カンジダ症の治療に関する考え方
カンジダ症は日和見感染症であり、カンジダと宿主のバランスがくずれることにより発症します。
このため宿主側が持つリスクファクターが発症に影響を及ぼすので、カンジダを除去するだけでなく、リスクファクターを考えながら対処する必要があります。
最近では、口腔内のヒリヒリ感を生じる紅斑性口腔カンジダ症(赤いカンジダ症)が認識されはじめ、これは口腔乾燥や義歯の不適切な使用と関連のある病型と言われています。これら以外にも多彩な症状を示し、意外に多くの口腔内病変にカンジダが関与しているということがわかってきているのです。
このように、カンジダ菌のみをターゲットとするのではなく、なぜカンジダ菌が増殖・定着するのかという背景も鑑みながら、対処していく必要がある疾患なのです。