■ 経歴等
出身大学:北海道大学歯学部歯学科 2003年卒業
出身大学院:北海道大学大学院歯学研究科博士課程口腔医学専攻
留学先:ミシガン大学歯学部生体材料科学講座補綴学分野(Department of Biologic Materials and Sciences, Division of Prosthodontics, University of Michigan, School of Dentistry)
■ 現在の肩書:
・長崎大学生命医科学域(歯学系)口腔インプラント学分野・准教授
・公益社団法人日本補綴歯科学会 指導医・専門医
・一般社団法人日本老年歯科医学会 専門医
・公益社団法人日本口腔インプラント学会 専修医
・ITIフェロー
リサーチマップURL
■ 研究に関する概要
・薬剤関連顎骨壊死の病因・病態解明研究と治療法開発研究
・間葉系幹細胞治療による硬軟組織再生研究
2003年に初めて報告されたビスホスホネート製剤関連顎骨壊死(BRONJ)を皮切りに,デノスマブ関連顎骨壊死(DRONJ)や血管新生阻害薬関連顎骨壊死など,様々な薬剤が顎骨壊死を起こすことが報告され,海外ではまとめてMRONJ(日本では現時点でARONJ)と呼ばれているが,MRONJは難治性の硬軟組織疾患であり,患者の口腔関連QOLを阻害して日常生活や社会活動を大きく制限することが知られている.
ところが現在でもその病因と病態は不明で,対応法や治療法もよく分かっていないことから,基礎研究・トランスレーショナルリサーチ・臨床研究からこれらを明らかにしようと試みている.
これまで,5種類の高頻度発現型BRONJ/DRONJモデルを作成し,3種類の治療法(2種類の幹細胞治療とPTH薬の間歇的投与)がBRONJ/DRONJを緩解・治癒させることを証明し,ひとつの治療法は臨床的にもBRONJを治癒させることを突き止めた.
さらにBRONJとDRONJは肉眼的には似ているが,その病因や病態が異なる可能性も明らかにしていて,最終的には臨床応用可能な治療法の開発につなげていきたい.また,決定的な病因に関する分子の同定も行いたい.
一方,失われた骨組織や軟組織に対する幹細胞治療も行っており,幹細胞治療による骨増生や唾液線組織再生に関する基礎・臨床研究にも参画している.
・インプラントのデザインや表面性状によるインプラント周囲骨組織の動態解明研究
インプラントのデザインや表面性状がインプラント周囲の骨組織動態にどのような影響を与えるかについての研究を行っている.
現在まで,大阪大学との共同研究で,咀嚼などの荷重環境下において,インプラント周囲の骨組織動態を制御できるインプラントデザインの存在について証明し,制御分子の候補についても可能性ではあるが見出すことができた.現在は更なる研究を行い,骨組織動態解明研究を続けている.
■ 臨床家の先生方にお伝えしたいこと
私は毎日9時から17時までは皆さんと同様に歯科臨床を行い,その後に動物実験などのいわゆる研究を10年程度継続してきました(留学先では研究のみ).
基礎的な研究を継続しているからなのか,患者さんの治療をしていて常に考えることは,
「手を動かして今まさにしている診療行為は,本当に正しいのか,それとも歴史が作った習慣的作業なのか」です.
私たちの職業はとても魅力的でありますが,知識と技術の両方を必要とする特殊な職業であるといえます.したがって,日々の患者診療もそうですが,誤った診療行為を永遠と続けていては,治療結果に永続性や予知性が担保されるはずがありません.ましてや,手っ取り早く治療技術のコツだけをつまみ食いするようなことを続けていたら,正しい歯科治療など分かるはずもありません.
ですから先生方にはたくさん勉強をしていただき,ご自身の診療環境や設備,そして患者さんの要望を総合的に鑑みて,本当の歯科治療を行っていただければと思っています.また,正しい知識を得るための術も学んでほしいと思っています.