■ 所属等
出身大学:九州大学歯学部(2004卒)
出身大学院:九州大学大学院歯学府口腔機能修復学講座咀嚼機能再建学分野(現 インプラント・義歯補綴学分野)
留学先:スウェーデン・マルメ大学歯学部補綴学教室 2014.2-2016.2スウェーデン・マルメ大学歯学部口腔外科学教室 2016.3-2020.3
■ 現在の肩書:
九州大学大学院歯学研究院 助教公益社団法人日本補綴歯科学会 指導医・専門医公益社団法人日本口腔インプラント学会 専修医 リサーチ九州大URL
■ 研究キーワード
歯科インプラント治療(補綴・外科)、骨増生、骨補填材料
■ 研究に関する概要
私は、これまでインプラント治療に関する基礎研究を行ってきました。研究者としての第一歩は、骨増生に関する研究でした。器用ではない私は、骨量・骨質等の条件が厳しい患者さんへのインプラント治療を容易にするための新しい術式を生み出せないものかと考え、例えば注射しただけで骨が増える。そんな飛び道具を開発したいと夢みる大学院生でした。多少トリッキーな夢を叶えるための研究テーマでしたが、指導教員の先生方のお陰で学位研究をまとめることができました。それと同時に研究を続けたいと思う気持ちも強くなりました。そして大学院修了後も、インプラント体・骨補填材料に関する研究を継続してきました。近年、インプラント埋入手術時に気をつけるべきポイントについて力を入れて研究しています。インプラント治療に関して、埋入手術に到るまでの診査・診断、そして治療計画、補綴装置の選択等に関しては、多く論じられています。インプラント体埋入手術の部分については、骨模型にインプラント体を埋入する実習を体験されたことがある方も沢山いらっしゃるのではないでしょうか?インプラント体埋入手術は不可逆的な侵襲であり、患者さんにとっては後戻りのきかない大事な局面です。しかし、埋入手術について、成書にすら詳しい記載が少なく、セミナー、実習等でも多くは語られていません。インプラント治療が高い成功率を具備した予知性の高い治療であることは間違えない事実です。しかし、臨床現場において、早期失敗が全くないとは言えないのではないでしょうか?失敗を減らすための方策は、一つ一つの手技への研究エビデンスの構築とエビデンスに基づいた治療精度の向上と考えています。インプラント治療が広く普及した今だからこそ必要なことと信じています。例えば、高トルク埋入後のインプラント周囲骨はどのような変化をするのか?変化を起こす原因は何なのか?変化した骨に咬合荷重を負荷すると骨内で何が起こるのか?安全に初期固定を獲得しつつも骨破壊を最小限にする方法はあるのか?埋入時のインプラント体表面への唾液のコンタミネーションはオッセオインテグレーションに与える影響は?骨増生を行なった部位、埋入と同時に骨増生を行なった部位でのオッセオインテグレーションの実際は?等の臨床現場からの疑問が、これまで行なった研究、現在行なっている研究につながっています。夢のある新発見、それは研究の醍醐味です。私の論文には当たり前のことしか書いていない、面白くない、とご批判を受けることもこれまでにありました。しかし、日常臨床で当たり前とされていることで実際は証明されていないことは意外と多いものです。実は証明されていないことを解明し、エビデンスを積み重ね、成書におけるインプラント体埋入の項目の厚みを増すことが私の夢です。そのような取り組みの中で新しい知見の発見があり、次世代のインプラント治療がさらに素晴らしい治療として花開くと信じています。
■ 臨床家の先生方にお伝えしたいこと
私は研修医必須化直前の世代であり、学部卒業後大学院に入学しました。当時インプラント治療に興味があり研究も臨床も学びたいと思い九州大学の第二補綴科を選択しました。大学院時代は、研究・臨床の指導教員に恵まれ研究を念頭に置いた臨床、臨床を念頭に置いた研究をライフワークとする素地を作ることができました。その後念願叶い、インプラント治療発祥の地・スウェーデンに留学しインプラント治療に関連する研究を継続して行なってきました。研究中心の生活となりがちな留学生活の中、学会・研修等でヨーロッパに来られた多くの先生方と知り合うことができました。留学前には講演や本の中でしかお目にかかることができなかった著名な先生方とも共通のトピックスのお話をすることができたのはいい思い出です。今日本に戻り、研究を再スタートしていく上で、臨床家の先生方と臨床のお話をし、研究のヒントを得ることが非常に大事なことです。臨床と研究の架け橋となれるようこれからも精進しますので今後ともよろしくお願いします。