■ 経歴等
出身大学:北海道大学歯学部歯学科(2003卒)
出身大学院:北海道大学大学院歯学研究科博士課程・予防歯科学教室
留学先:University College London
■ 現在の肩書:
東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 健康推進歯学分野 教授
東北大学 大学院歯学研究科 歯学イノベーションリエゾンセンター 地域展開部門 教授 (クロスアポイントメント)(兼任)
日本口腔衛生学会・認定医
日本口腔衛生学会フッ化物応用委員会・委員長
BMC oral health・Associate editor
Journal of Epidemiology・Associate editor
日本老年学的評価研究(JAGES)プロジェクト・コアメンバー
International Centre for Oral Health Inequalities Research and Policy(ICOHIRP)・ Core member
リサーチマップURL
■ 研究キーワード
健康格差、社会的決定要因、ソーシャルキャピタル、口腔の健康と全身の健康、因果推論、フッ化物応用、東日本大震災
■ 研究に関する概要
WHOなどの調査やLancet誌、JDR誌での報告により、歯科疾患は、世界で最も多い疾患として知られるようになってきています。う蝕は特に多く、3人に1人が未処置う蝕を保有しています。
これは実は日本でも同じ状況にあります。子どものう蝕が昔よりも減った今でも、4000万人近い日本人が、未処置う蝕を有しています。
この理由としては、歯を有する高齢者におけるう蝕の増加といったこともありますが、一番はやはり、そもそも有病率が高いということです。子どものう蝕の有病率も、他の疾患に比べると圧倒的に多い場合がほとんどです。世界的には、有病率の多さの点から、歯科疾患の重要性が言われるようになりましたが、日本では減ったことばかり強調されており、重要性がうまく伝えられていないように思われます。
この歯科疾患には地域や社会集団による健康格差が存在します。生まれて間もないころから健康格差は存在し、成長とともに広がっていきます。3歳の時点で、東北地方は関東地方の2倍ほどう蝕の有病率が高くなっています。成人の歯周病、高齢者の歯の残存にまで、健康格差は存在しています。健康格差の原因を調べ、縮小するためにどうしたらよいのか、研究を続けています。
こうした研究は「疫学研究」ですが、同じ手法を用いて、口腔の健康と全身の健康の因果推論も長年行っています。口腔の健康の健康寿命への影響や、義歯の清掃をしないことで肺炎のリスクが増加することなどを、先進的な解析手法で検証を行っています。
■ 臨床家の先生方にお伝えしたいこと
新型コロナウイルス感染症では様々なフェイクニュースが問題になりました。
実はフェイクニュースは歯科界でも他人事ではありません。特に、フッ化物応用についてはフェイクニュースが多く、例えば「フッ化物配合歯磨剤は、チタンインプラント患者は使わない方が良い」という話には日本口腔衛生学会から否定の見解が出されています。
こうしたフェイクに臨床家の先生方が惑わされず、人々がその被害を受けないようにすることは、公衆衛生に関わる専門家の責務です。疑問を科学の観点から解きほぐし、分かりやすく伝えられるよう努力していきたいと思います。また、あまり認識されていない歯科の重要性を、データの観点から明らかにし伝えていくことも、同時に行っていきたいと考えています。