■ 【質問】
80歳を超えるBP服用女性患者で、上下顎臼歯欠損(義歯使用)で上顎前歯に加重負担がある症例で、歯周ポケットが無いにも関わらず(Per、セメント質剥離、歯根破折は認められなかった)根尖周囲の顎堤に疼痛を訴え、やがて膿瘍形成をした患者がおりました。やむなく抜歯しましたが、治癒が長引き大学口腔外科に紹介しました。その際、薬剤性の顎骨壊死と病名を診断されましたが、抜歯以前から腫脹、膿瘍形成を繰り返していました。すでにその時にはいくつかの原因があり感染を起こして薬剤性顎骨壊死を生じていたと考えればよいのでしょうか。
■ 【回答】
薬剤関連顎骨壊死(MRONJ)ですが、日本では抜歯をためらうあまり、内在性のMRONJがひそかに進行し、抜歯を契機として爆発する患者が多いことが示唆されています。抜歯以前から腫脹と膿瘍形成を繰り返したのであれば、周囲の骨髄も炎症状態にあり、内在性のMRONJが進行していたのだと思います。先生のお考えの通りだと思います。先生が悪いわけではありませんので、ご安心ください。抜歯の際に休薬が問題となっていますが、現在のポジションペーパーでは休薬には科学的根拠がなく、原則的には休薬せずに抜歯することが求められており、世界的にも休薬の効果がないことが示されていますので、休薬はせずに抜歯を行ってください。
■ 【回答者】
黒嶋 伸一郎先生長崎大学生命医科学域(歯学系)口腔インプラント学分野・准教授
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